ANA国内線【PR】

~異人誌 はこべ によせて~ vol.2

自転車に乗って ツナこと島崎敏一


自分が幼かった頃の、父親の記憶を強烈に思い出させてくれた出来事が学校であった。

飯田技術専門校の木造建築科に通うこと1ヶ月。授業では大工仕事を教わる前に、まず自分の道具を仕立てることから始った。砥石の台を作り、鉋(かんな)の刃を研ぐ。金板(かなばん)とよばれる鉄の板の上に、金剛砂という鉄の粒子をのせて、鉋の裏を研ぎ始めた。
しゃがんで前のめりになって、刃を押し当ててゆくと、鉄臭いにおいが研ぐたびに鼻をついた。
錆びた釘の様なあまり良い匂いではないけど、どこかで嗅いだことのある匂い…細く途切れそうな記憶を手繰ってみたら、そこに父の姿があった。棟梁の父の姿が…。

小学生の頃、いやもっと前かもしれないけど、汚れた作業着で帰ってきた父からは、いつも木のにおいと砥石のにおいがした。その匂いがお父さんの匂いだと、幼心に感じていたと思う。もう20年近く前の事なのに、記憶と嗅覚はしっかりとつながっていて、忘れていた思い出を呼び覚ましてくれた。
突然浮かび上がった父の姿と、自分の未熟で半端な姿が重なって、なんだか恥ずかしくて悔しくて、色々な思いが交錯して、それでもやっぱり嬉しくて‥父の存在に早く追いつきたくなった。それはとても長い道のりだけれど‥。

そしてそう思ったのがキッカケで、毎日のめり込むように鉋を研ぐようになった。
刃物を研いで行くと、刃先の色がくすんだ灰色から、段々と輝き初めて鏡のように光ってくる。研ぎ上がった刃で、ヒノキの柱の仕上げをかけた‥と、またその話は別の機会に話そうと思う。
ってなわけて、今日も元気に自転車に乗って大工修行、長い道のりを走って行きたい。

それにしても記憶って面白いと思う。今じゃ実家に帰って父と再会しても、酒とタバコと屁のにおいしかしない。なんでだろう?、記憶は思い出を美化してしまうものらしい…。





by tuna_life | 2007-05-24 19:31 | 大工修行

日々の近況報告と備忘録です。
by tuna_life

お知らせ!

4月に中川村に引っ越します。渡場の信号から、走って5秒の家です!

最新のコメント

お気に入りブログ

最新のトラックバック

ライフログ

検索

おすすめキーワード(PR)

ファン

XML | ATOM

skin by excite