ツナ日記-Toshi's Diary-

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バームクーヘン(はこべ5月号に寄せて)

【バームクーヘン】(baumkuchen ドイツ)バター・小麦粉・砂糖等で作った生地を回転しながら焼き、層状になった洋菓子。切り口が気の年輪のような模様となる。ドイツ語で木の菓子の意。

 先日、倉庫の増改築の仕事をさせて頂いた。3坪弱の部屋を作り、入り口は自作の板戸を入れた仕事。普段、材料を材木屋で買う事が多いが、今回は間柱・鴨居敷居・建具の材料を、自分達で原木を運んだ赤松を使うことにした。2年前に、親方や山師の方と共に、飯田市上久堅で赤松の原木を製材所へと運んだ。そこで、厚み5センチ×長さ4メートルの板にしてもらい、桟積みして天然乾燥させた。2年間じっくり乾かした赤松は、粘りがあって素直(反ったり狂うことが少ない)。割れも少なく、加工し易い材になってくれた。世間では「赤松=松喰い虫=木材として価値が低い」、というイメージがあるがそれは大きな誤解。古民家の梁は粘りのある赤松を使っている家が多いし、鴨居敷居はもちろん床板や壁板、ちゃぶ台に至るまで、加工が容易な赤松は多用され、日々の暮らしに役立っていた。しかし現在、赤松の出荷状況は、外国産材の流入、松喰い虫の被害、そして農水省の「その場しのぎの林業政策」によって、流通量が少ないのが悲しい現実だ。

 板にして乾燥させておいた赤松を、使用箇所や目的に応じて製材した。木の性質やクセを見抜き、適材適所を目指して加工をしていった。この「木ごしらえ」という作業は、加工の第一段階でとても大切な作業。サイズが均一な材を作れるかどうかで、仕事の正確さに大きな影響が出るからだ。僕はまだまだ仕事が遅いので、とても時間がかかる。そして「墨付け」をして「刻み」を施す。実際に赤松を加工してみると、本当に扱いやすい材で、惚れ惚れしてしまった。ノミを当てるとキレイな穴が掘れるし、カンナのかかりはすこぶる良い。なんだか自分の腕が上がったような気持ちにさせてくれた。現場では、倉庫の一角に骨組みを作り、壁をつけ板戸を入れて部屋を作った。お施主さんが喜んでくれた事が、何よりも嬉しかった。

 木々は、大工というフィルターを通ることで、自然物から人の暮らしに役立つ「もの」へと変化を遂げてゆく。山での原木の搬出から、現場の造作仕事まで、一連の木の流れを通して仕事ができるということは、山に近い大工の特権かもしれない。正に、地産地消の大工仕事だ。毎日、木と向き合って仕事をしていると、普段の生活では体験できない驚きがある。四六時中、木を見続けていると、木の幻覚を見るのだ。おやつにバームクーヘンを食べていた時、バームクーヘンの年輪の模様が、本物の木目に見えてしまい、「あー、こんなキレイな木目なら建具にいいなぁ」なんて幻覚が見えたことがあった。調子良く作業をしていたら、集中しすぎて鼻血が両鼻から吹き出たこともあった。日々、無意識に仕事に没頭できている。

 そうやって熱中した作業でも、終わってから大失敗に気づく事もよくある。もちろんその仕事はやり直し。簡単なミスに気づかず、それが大きな失敗になってしまうのだ。成功と失敗を繰り返す、山あり谷ありの毎日。上手くゆけば思わず仕事中にスキップをしてしまうけれど、逆に失敗するとショックでその場にうずくまり立ち上がれないこともしばしば…。とはいえ、成功も失敗も、全部まとめて自分がダイレクトに現れるのが、ものづくりの面白いところ。自分の仕事で、少しでも多くの「幸せ」を作り出せたら、こんなに嬉しい事は無い。明日の仕事が楽しみで、今夜もなかなか眠れない。そう思える仕事と出会えて幸せだと思っている。
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by tuna_life | 2009-05-08 21:24 | 大工修行

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